第7回 環境会計と環境報告書


01 環境会計をなぜ導入するのか?


環境経済基礎講座第3回で、21世紀の循環型経済社会では、経済性、社会性、環境配慮の[トリプルボトムライン]について、企業は、対外的にも社内的に説明する責任があり、その3点について総合的に評価されることになることを、ご説明しました。

企業は、その環境に対する取り組みを、いったい、どのようにして内外の人たちに説明すればよいのでしょうか。[環境監査]や[環境パフォーマンス]データは、予測や結果ではあっても、企業の努力の証である“コスト”に対して、どれほどのベネフィット(効果)があったかという、対費用効果を表わすものではありません。

また、環境対策のベネフィットは、かならずしもその企業にとっての“収益”として返ってくるわけではありません。たとえば、二酸化炭素排出量の削減や、有害化学物質の廃絶などは、社会的には大きなベネフィットを生みますが、企業の収益には直接関係ない、という場合もあります。

環境保全努力の収支を、なんとか誰にでもわかりやすく、また企業間で比較ができるように、貨幣単位や物量単位で表そうとするものが、[環境会計]です。


環境会計とは、なにか?
いままでは、環境に対するコストというと、“直接利益を生まない”“やむなく支払う費用”というのが、企業にとっての実感だったと思います。しかし、しっかり環境保全コストを把握し、なぜ環境のために費用をかけ、投資をするのか、ということを見きわめれば、将来のコスト削減につながったり、現行の価格設定を再度見直したりすることもできるはずです。

◎環境コストを把握する
ただ環境によいからといって、企業活動のあちらこちらでバラバラに発生している環境対策へのコストをそのままにしていたのでは、企業全体として有効に環境対応をしているのかどうかもわかりません。企業内部で無駄が出ている可能性もあります。費用を把握し、集計しなければ、管理もできないのです。

環境会計は、省エネ、省資源、環境配慮製品の設計費用、生産ラインでの環境配慮、廃棄物処理、リサイクルなどなど、それぞれの費用を集計して、自社が環境対応のために、どれくらいの費用をかけ、設備などにどれくらいの投資を行っているかを、全体像として把握することを促します。

◎管理や分析により企業経営を改善する
環境コストが把握できれば、コストを、製品やサービスの原価に組み入れて、環境商品としての価格設定をすることができます。これからは“環境配慮商品”があたりまえなのですから、企業として適切な価格設定をすることと、受益者としての消費者がそれを適切であると認識することが大切です。

価格設定という経営上の重要な意志決定をするうえで、この点が、従来の大量生産・大量消費の時代ともっとも大きく異なる点な のです。

環境パフォーマンス評価でも、コストを把握できれば、対費用効果として二酸化炭素や硫黄酸化物の排出量削減などのパフォーマンスを知ることができます。環境パフォーマンスも、より効率的に改善することができるのです。

無駄を見つけ、それを論理的に削減・除去することもできます。たとえば、無駄になっていた副産物を資源化したり、自社のみで使われていた環境技術を事業化することもできるでしょう。

また、経営活動と環境保全活動を一体化することができ、経営の意識が、環境保全型に向いていくという効果もあげられます。

◎企業の環境対応努力を開示する
どんなに環境対応にすぐれている企業でも、具体的な数値が見えないと、客観性・信憑性がありません。財務会計と同じように、環境会計を公表することで、株主、金融機関、消費者、取引先などに対して環境対策について説得力のある説明ができます。

たとえば、アメリカでは土地が汚染された場合、その浄化責任を広範な負担能力のある関係者に課する“スーパーファンド法”という法律があります。有害化学物質を扱っている企業の場合、ある日突然、その責任や賠償をもとめられる可能性があるということです。ある企業が、こういったリスクを回避するための設備投資やリスクマネジメントをおこなったとしたら、これにより、将来起こりうる危険を回避することができるベネフィットを得たとして、この事実を開示すれば、外部の関係者にも納得のゆく説明ができるのです。


■環境会計で、なにが、どう変わるのか
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[出典]『全図解・環境会計のしくみ』



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