第3回 21世紀に向けての環境経営


04 環境対応が企業の価値を決定する


トリプルボトムライン
ボトムラインとは、決算などの集計でいちばん下にくる、“足し引きをした最終的数字”のことです。ロンドンの環境コンサルティング会社、サステナビリティー社の社長であるジョン・エルキントンは、これからの企業には、“トリプル・ボトムライン”、つまり3つの最終数字(評価)が必要であると提唱しています。

◎第1に経済的にきちんと利潤をあげていること
◎第2に環境に対して配慮がなされていること
◎第3に持続可能な発展について社会的に寄与していること

この3点において、企業は評価されるべきだとしています。


なぜ企業に評価を与えなければならないのか
私たち一般市民が企業に評価を与えるチャンスは、まず消費者として製品を選ぶときです。そしてもう1つ、これからその重要性が増すであろうと思われるのは、投資の機会です。

企業は1年間の営業成績として決算報告書を公表しますが、これは法人税の申告のためと、もう1つは投資家に対する“情報開示”のためです。日本よりも証券市場が発達している米国では、投資家への正確な情報を提供するため、企業の決算報告書には開示が義務づけられた項目がたくさん盛りこまれています。日本も、年金制度の崩壊、金利の低迷などから、証券市場は拡大していく見こみです。そのとき私たちは、企業の収益のみを判断の基準としていてよいものでしょうか。


社会的責任投資:SRI
適切な利潤をあげていなければ、当然、企業としては成り立ちません。しかし、いままでのような経済発展が不可能である以上、企業は環境に対して配慮をし、持続可能な社会構築のために寄与するのでなければ、これも存続ができないということになります。どんなに利潤をあげていても、環境対応や社会貢献が足りない企業は、将来的にはリスクを背負っていると考えるべきでしょう。

こうした社会的貢献度の高い企業に投資を行うことを、[社会的責任投資:SRI]といいます。投資家は、社会貢献度の高い企業を自らの意志として選び、株を購入したり、そういう企業を対象にしたファンドに資金を預け入れたりします。企業は、株価が上がることにより資金調達などで有利になり、そして、こうした企業が伸びれば、社会もよくなる、といった具合です。

こういった社会的責任投資は、すでにヨーロッパやアメリカでは10年ほど前から活発に行われてきましたが、日本でも最近注目を浴びているSRIが、環境対応にすぐれた企業を対象とした[エコファンド]です。1999年8月に発売された投資信託[日興エコファンド]は、こういった環境問題に関心のある投資家の人気を集め、2000年4月初頭現在で1,400億円あまりの資金を集めました。これは、当初の予想をはるかに上まわる数字です。

エコファンドのようなファンドに多くの資金が投資されれば、企業もそれだけ環境対応の重要性に気づき、環境経営を進めやすくなります。日本が循環型社会に向けて動き出す、まさに起動力となることでしょう。

■企業の環境管理システムへの取り組み状況
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[出所]環境庁・1996年度環境にやさしい企業行動調査
[出典]『環境要覧1997/1998』 財団法人地球・人間環境フォーラム参考資料


[参考資料]
『戦略環境経営 エコデザイン』 山本 良一・著 ダイヤモンド社・1999年刊
『手にとるように環境問題がわかる本』 三和総合研究所 研究開発第2部・監修 かんき出版編集部+ビッグペン・編著 かんき出版・1997年刊



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