第2回 環境保全のためのさまざまな法律


01 環境問題は、社会全体の責任


公害から環境問題へ
日本では1970年代、水俣病、イタイイタイ病といった工場からの排出物による公害が深刻化し、それに対処する形で発布された“公害対策基本法”が核となって、環境保護に関する法整備が進んできました。そのおかげで、有数の工業国であるにもかかわらず、いわゆる公害は低減したといえます。

しかし、1990年代になると、地球規模での環境破壊が深刻化し、環境保全のための法整備が必要となりました。この問題は、社会全体が一致団結して対処しなければ、破壊をくい止めることがむずかしいという点で、責任者がはっきりしている公害とは大きく異なります。それゆえ、1990年代に成立した環境関連の法律の特徴は、廃棄物を出す企業だけでなく、行政や消費者にも責任を問うているという点にあるといえます。


1992年、リオデジャネイロ会議からの出発
1992年、ブラジルで開催された地球環境サミットでは、[持続可能な発展]を目指して“リオ宣言”が採択されました。同時に、それを実現するための40章からなる行動計画[アジェンダ21]を発表し、参加各国の首脳が、これに署名しました。これを受けて日本では、93年11月に[環境基本法]が制定されましたが、環境基本法は、日本の環境政策の理念と大きな枠組み、基本的な施策を規定しています。つまり、日本がその後に行う環境対策の姿勢を明確にした法律であるといえます。

環境基本法にもとづいて、94年に策定されたのが[環境基本計画]です。21世紀半ばまでの長期的展望に立って、どのように行政を行うかを示した施策の大網です。しかし、排出物が予想をはるかに上回る速度で増大してきていること、またダイオキシン、環境ホルモンなど、予想外の新たな問題が続々と噴出してきたため、この計画だけでは対処しきれなくなってきました。環境庁は、全面的な政策の見直しをせまられているのです。

そこで現在、環境庁で検討されているのが、[循環型社会基本法](仮称)です。この法案には、持続可能な発展を推進するため、物質循環の理念、消費者も含むすべての関係者の責務、そして具体的に推進すべき施策などが盛りこまれる予定です。この法案が成立すれば、日本が“循環型社会”に向かってとるべき行動が、具体的に示されるはずです。

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法規制はビジネスチャンス!
たとえば、[家電リサイクル法]が施行されると、家電メーカーは家電製品のリサイクルを義務づけられます。メーカーにとって、これは大きなコストの増大ですが、すべてのメーカーが法の規制を受けるのですから、規制を早く、低コストでクリアした企業は、逆に他社に対して大きなリードを奪うわけです。業界内の技術的革新だけでなく、まったくほかの業種の技術が役に立つこともあるのですから、これはもう1000年に一度のビジネスチャンスというわけで、各社とも、この新しい環境ビジネスの開発に力を注いでいます。また、展示会やシンポジウムなどで、異業種間での交流も盛んになってきています。



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