Following the Pass of Polar Bears.


Photo

長めの鎖に繋がれた犬は、吼えながら懸命にクマの攻撃から逃れようとしている。しかし決して逃げ回っているだけではなく、むしろ果敢に吠え、向かっていく。
ブライアンは、犬を襲う白クマを撃退するため“ズドーン”と2発目の銃を撃ったが効き目がない。プーンと車内に火薬の匂いがまき散らされる。もちろん撃ったのは、クラッカーと呼ばれている空砲であって、最初からクマを殺すのが目的ではない。花火のように大きな音がするが、クマの近くで音が出るよう距離を計って撃つのはなかなか難しい。“こいつ、クラッカー弾を撃たれたことがあるな!” ブライアンは吐き捨てるように怒鳴る。誰に向かって怒鳴っているのだ。ここにいるのは私だけじゃないか。驚くほどの記憶力をもつ白クマは、過去に空砲を撃たれた経験を覚えているのだろう。ブライアンは常に3種類の弾を持っている。クラッカー、小さなベアリングの弾が入っている散弾、そして、戦争映画で見られるように人も倒せる殺傷力のある弾である。
“HISA、実弾!” クラッカーではこのクマには効き目がないことがわかったブライアンは、急遽散弾を撃つことに決めたのだ。“弾をよこせ”と、ブライアンは手を伸ばしてくる。前座席の背もたれが高いため、後部座席の床に落ちた弾に手が届かない。
思いっきりお尻を車の天井近くまであげ、ほとんど逆立ちになってしまっているため、頭が下になり血が頭に上ってくる。自分なりに役に立ちたいと必死にがんばるが、床に転がっている弾の種類は見ただけでは、区別がつかない。やっと手が届いた後部座席の床から、拾い上げた弾を弾ベルトごと渡す。ブライアンは、ベルトから3個の散弾を引き抜く時も、目は犬を襲っている白クマを睨んでいる。2発の弾を指の間に挟み、1発を銃に込めクマの近くに向かって発射する。
next


to MENU