Following the Pass of Polar Bears.


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トレ−ダーズ・テーブルの仲間たち

チャチルに到着して、真っ先に行ったのは、宿から10分ほど歩いたところにあるレストランだ。肩を寄せ合うように続く家並みは、昨日までのブリザードで、すべて白く凍りついている。途中、歩いている人を、ほとんど見かけない。スクールバスの黄色以外、あとは真っ白だ。
わずか西に行けば、チャチル川河口の港に出る。北に5分も歩けば、北極圏までつながっている巨大なハドソン湾が見える。町の東のはずれから西のはずれまでは、歩けば10分ほど。南の方は、一列の家並みがあるだけだ。西部劇に出てくる酒場のようなレストラン、“トレ−ダーズ・テーブル”は、このチャチルでにぎわいを見せる、ごく限られた場所だ。
レストランの壁には、たくさんのハドソン湾の絵、ムース、じゃこう牛、カリブー等の、剥製や角が飾られている。柱には古い銃も掛けてある。羅針盤、操舵輪、ランプ、太いロープ、浮き輪等の船具や船の旗が、港町のレストランであることを物語っている。飾られているたくさんのハドソン湾の絵も、室内装飾のデザインのほとんどは、地元のブライアン・ラドーンの作で、港町チャチルの飾り気のない荒削りな面持ちとは違った雰囲気をのぞかせている。ここが、私のホームグランドとなった。
ここに集まる人たちは、それぞれ、ビーバーの毛皮や厚手の毛糸の帽子を被り、フェルトを内側にはった大きなブーツや長靴、毛皮のついた厚手のパーカーをはおり、それにトイレでは邪魔としかいいようがない厚手のズボンをはいていた。ネクタイやワイシャツ姿は、どうみてもこの店には似合わない。2人のカナダ人ウェイトレスは、いつも笑顔で、きびきび働いている。学生みたいに初々しい。レストランの入り口近くには、詰めれば15人くらい座れる大きなテーブルがある。これこそが、白クマの情報を集めたければ“世界で一番”だと聞く、たいそうなテーブルなのだ。
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