瘢痕(はんこん)組織

瘢痕(はんこん)組織と筋断裂の修復
損傷を受けた皮膚や筋肉が治癒する過程でみられる硬い組織を瘢痕組織という。正常な組織ではコラーゲンが規則的に並んでいるのに対して、瘢痕組織ではそれが不規則に積み重なっている。瘢痕は収縮も伸張もされないので、筋の広い範囲に存在すると、筋全体の弾力と可動性が乏しくなり、筋の収縮が不十分になったり、関節可動域が狭くなったりする。肉離れの治療では、瘢痕形成を最小限にくい止めて、筋の柔軟性を保つことが重要である。そのための具体的方法として、筋に対しては、長期間、関節を固定しないようにして、血行状態を良くすることや、筋の走っている方向に沿って適度な伸張刺激を加える(コラーゲン線維は張力の方向に並ぶため)。一方、全身に対しては適度な栄養をとり、運動・睡眠に気をつけて健康を維持する。これらが適切に行われれば、瘢痕はかなり長い期間を経て(受傷後1〜2年程度)、ある程度の伸張性が得られるようになる。
従来、筋損傷部は瘢痕組織に置き換わっており、筋組織は再生されないと考えられていた。しかし、近年の研究によって、ミクロレベルでは、筋肉の再生が起こっていることがわかっている。そこで、筋損傷部において、瘢痕組織による修復をできるだけ抑え、筋肉組織の再生を促進するにはどうしたらよいかが、筋損傷研究の今後の課題となっている。