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■ふたたび7月21日ごろ 旅と宿

旅の宿にモテルを利用するというと、一時はラブモテルと解され誤解をまねいたこともあったが、いまでは、日本の人にもよく知られている。モーター、つまりクルマとホテルをつづけて、短く“モーテル”。クルマ社会のこの国では、セールスマンも、ビジネスマンも、運送会社も、個人の用事や旅行も、クルマが主役だった。したがって、旅の宿、ビジネスの宿として、モテルが小さな町にもかならず1軒や2軒はあった。都会のホテルとちがって、便利で経済的な点がウケて、繁栄となったのでしょう。

ところが今回の旅で、モテルも、社会・経済の動向とともに変化していることを知りました。私がいま走っているのは、アメリカの北部です。中央から西のシアトルにかけて言えることは、まだまだ古いタイプのモテルがたくさんあります。と申しますのは、それぞれが思い思いに、部屋の大きさや部屋数を設計しているので、異なった雰囲気があり、個性的で“味”があるのです。旅の情緒でもあります。反面、小さな町や村の過疎化が進んでゴーストタウン化しているところは、まずモテルがまともに打撃を受けるようです。

モンタナの、とあるモテルは名もなく、窓に電話番号が書いてある。公衆電話は、村はずれにポツンと1台。ここから電話をすると、若い作業服の婦人がクルマを飛ばして来た。お金を渡し、カギを受け取ると“じゃー、ごゆっくり。なにかあったら電話して”と帰ってしまう。“電話してね”ったって、部屋に電話があるわけでもない。長屋に客は僕1人なので、“なにか”あるわけもないでしょう。

翌日は、日本への電話連絡と、FAXの受送信をしなければいけないので、やや大きめの町の全国チェーンのモテルへ行った。宿代を聞いて驚き、FAXは1枚5ドルと言われてオッタマげる。近くの小さなモテルでたずねると、部屋代は昨夜の無人モテルより1ドル高いだけ、その上FAXは“タダ”と言う。小ぎれいないいモテルだった。何枚もFAXをお願いしたので、FAX代にして下さいとお金をおくと“助かるわ”と初老の宿のオバサン。

無人モテルといえば、数日前のがいちばんでしょう。オハイオ州のパウルディングという古い小さな町の、スプロー・モテルと古い看板が落ちそうなところです。受け付けの部屋には誰もいなく、小さな机の上に、カギと部屋番号を書いたカードがおかれている。1人か2人かで代金が5ドルちがうことも記されている。お泊りの方は、住所、氏名、車の番号をカードに書きこみ、代金をクリップではさんでドアの小さな穴に投函する。オートマ式でもある。翌朝は受け付けの机の上に、カギをもどせばよい。ここまで信用されると、逃げる気にもなれません。ただし、お世辞にも並のモテルと言えるしろものではない。

夕方、疲れはててからのモテルさがしは、疲れがさらに増す。クルマではすぐ近くでも、僕の自転車ではかなり遠く、いちいち宿を選ぶ気力などありません。100キロほどコイだ夕暮れ、シェラトン・インの看板があったので、受け付けで1人部屋をたのむ。安くない。ところが、部屋は途上国以下、窓にはガラスがなくビニールが張ってある。さすがの私でも入れませんでた。どうやら、倒産したシェラトン・インを移民として入国した人が副業に買収して、キリキリ舞いの経営をしている様子です。

モテルも全国チェーンが多くなり、新しいものはモテルより上のクラスの、イン(モーターイン)と化しています。長距離の旅行やビジネスには、飛行機が便利で安くなり、町や都市のまわりにはスーパーハイウェイができたことも、モテルを変えている大きな原因ではないでしょうか。

この業界もほかと同じようで、新しく、便利で、会議ができ、全国チェーンであることがのぞまれているようです。欲を言うならプールとジム付き……ハイウェイの交差する地点には、全国チェーンのモテル、マクドナルド系のファストフード、Kマートやウォルマートなどの安売りスーパー、ショッピングセンターが花ざかりです。旅をしても地方色などなく、どこの州に来ているのかわからなくなってきました。シカゴから東部にかけては、とくにそのような印象が強いです。

現代人は、冒険よりも安心を求めるようになってきているのでしょうか。アメリカの若者と日本を旅行すると、彼らはピザやハンバーガーの味に旅のストレスを解消し、日本人も外国で同様のことを行っているようです。