SHOES


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まちがった靴は凶器だ

慶応大学在学中から靴の研究をはじめ、今日まで約30年間靴作りに携わってきた 東京・青山にあるカルツェリア・ホソノの細野勝さん。1969年、 南青山4丁目にオーダーショップを開設した当初に、当時まだ医学用語でしかなかった 極度の外反拇趾のお客さんと出会い、足を守るための靴を作ろうと決意。 試行錯誤の末、現在の靴の問題は木型にあることを発見する。 今回は細野さんが考えた“足にやさしい靴”とはどんなものか語ってもらった。



壊される足
陸上競技を見ていればわかると思うんだけれど、黒人の方が強いですよね。なぜそういう結果になるのかというと、理由のひとつに先進国の人は足を靴で壊してしまっているんですよ。世界中どこの国の赤ちゃんもみんな同じ足をしています。それが成長過程での生活習慣を通して変化していくんです。そして靴を履く国の人々は、まちがった靴のせいで足が異常になっている。靴を履かない国の人のほうが正常な足をしているんです。

曲がった足
最初に南青山にお店を出して間もなく、当時はまだ医学用語でしかなかった外反拇趾のお客さんがオーダーに来たんです。知り合いの整形外科医に相談したら、合わない靴を履き続けた結果だと教えられ、それではと曲がった足に合わせた靴を何足か作ってみたんですがすべて痛いと言われて。そこで合わなくてもともとと曲がった足を正常に戻すように靴を作ってみた。それがとても具合が良いという結果が出て、それ以降自分がどういう靴を作るべきかがはっきりとしたできごとです。

自分の足を知る
日本人の足の特徴は甲高幅広と言われますが、これは思い込みに過ぎません。先程話した通り、足は生活習慣で変化します。日本人の生活習慣は戦後劇的に変わりました。とくにテーブルとイスの生活は足に大きな変化をもたらし、40歳以前の人は欧米人のような足の人が少なくありません。自分の足の正しい特徴をまず知ってください。思い込みだけで靴を選んでいると、まちがった靴しか選べません。

まちがった靴
靴は木型の抜け殻です。だから木型がまちがっていたらまちがった靴ができてしまうのは当然です。実は女性の靴は50年間まちがったままなんです。イタリアのある有名デザイナーが、靴の先端(トゥポイント)を靴の中心にしてデザインしたのがきっかけで、それが靴のお手本になってしまい世界中に広まったんです。正常な足は内側が一直線です。ですから靴の内側も一直線でなければならないのに、トゥポイントが中心になってしまっていたら、親指がまっすぐ伸ばせないのです。

正しい靴
良い悪いの前に、正しい靴を見つけてください。正しい靴とはトゥポイントの位置、足の幅、女性の場合は履き口の大きさが足に合っている靴です。値段が高ければ正しいとは限りません。デザイン優先、商売優先の靴は、あなたの足をそして体を破壊する凶器です。オーダー靴も木型がまちがっていれば正しい靴にはなりえません。合う靴が無いと感じるのは、あなたの足が悪いからではありません。あなたの足を守る正しい靴が考えられていないからです。

カルツェリア・ホソノ 青山本店
東京都港区青山5-1-2青山エリービル
地下鉄表参道A-4出口前
03-3409-9425・9426
photo 心地良くさせる靴を作りたいと語ってくれた細野さん

photo 女性の靴は幅6種類×長さ11種類の66サイズを用意

photo 売り場と一体化した工房では若い職人さんが目立つ

photo 靴を購入していったお客さんが置いていった靴を供養

photo こんな古い靴工具も飾ってある



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