東京都 多摩川

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府中市付近、是政橋の少し上流部。コイ釣りでは人気のポイントのひとつ。 多摩川に限らず、身近なところで楽しめるのがコイ釣りの魅力だ。


奥多摩の山々から東京湾へと流れこむ多摩川。中流から下流域は住宅街を流れているので、人々の憩の場となっている。広々とした河原には、公園やグラウンド、サイクリングコースなどがあり、休日ともなると近隣の人々が思い思いに楽しんでいる。日だまりでは、バードウォチングに来ているグループがお弁当を広げ楽しそうに話していた。コサギやカルガモなどをはじめ、数十種類の鳥たちを観察できるそうだ。また、犬といっしょに散歩を楽しむ人に出会う。犬も跳び跳ねたり走ったりとはしゃいでいる。犬も人と同じで、広々とした場所では身も心も開放されるのだろう。

多摩川の土手の上を、コイを見つけながら歩く。午前中吹いていた風もおさまり、暖かくなってきたせいで、ユスリカが数多くハッチしている。水深が浅く流れのゆるい場所では、オイカワらしき魚が水面をつついていた。その上流部に目をやると、黒い影が水面を通して見える。魚か、石か、それとも流木か。

土手の高い場所からだと、全体の流れの様子や水深がわかるかわりに、魚を見極めるのは難しい。水の濁りや水面のゆらめきで、石や流木を魚と見まちがうことがよくある。しばらくの間、その影を見つめていると、流心に向かってスライドするようにスーッと動いた。コイだ。

落ち着いて付近を観察すると、何匹かのコイを見つけた。そしてキャステイングポジション、ランディングできる場所を確認し、ここで釣りはじめることにした。枯れ草で黄金色に輝く土手を降り、タックルをセッティングする。ガイドにフライラインを通しながら流れを見ると、水面にある流下物を食べにコイが底の方からスーッと上がってくる。そして、大きな口をパクッと開けてくわえると、底へ戻っていく。その動きは、まるでスローモションの映像を見ているがごとく、非常にゆっくりとしていてユーモラスでもある。
さっそくコイが何度も水面に顔を出していた場所の少し上流へ、エルクヘアーカディスをキャスト。フライが水面をゆっくりと流れコイの場所に近づくと、フライに向かって黒い影が近づき、水面が動いた。すかさず合わせたが何の抵抗もない。フライをくわえていなかったのだ。その後キャストをつづけるが、コイの気配は消えてしまった。

用意してきたパンを細かくちぎってあたりにまき、様子を見ることにした。しばらくすると、そのパンを食べに水面に顔を出しはじめた。5〜6匹のコイが争いあうように、すっかりパンに夢中になっている。白いグローバグヤーンを使って、パンにそっくりに巻いたパンフライをキャスト。その中の一匹がパンフライをくわえた。確かなフッキングの手応えを感じたと同時に、下流へいっきに走りはじめる。8番ロッドが弧を描く、トルクのある重い引きだ。ちょうどカラフトマスや大型のブラウントラウトのファイトに似ている。上流へ、下流へ走り回り、ようやくランディングしたコイは60センチ。尾鰭も大きく発達していて、丸々と太っていた。

日が暮れて風が冷たくなるまで、数匹のコイに遊んでもらい、休日のひとときを十分楽しむことができた。身近な場所で、大物とのやりとりが手軽に楽しめる多摩川のカープフィッシング。冬場から春先の暖かい日中を選んで、ロッドを手に散歩がてらいかがなものだろうか?




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用意したコイ釣り用フライ。白いグローバグがいちばん反応がよかった。
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スティールヘッド用のロッドでも、このとおり大活躍。スリルを楽しみたい場合は6番でも、また風の強い日は7〜8番ライン指定のタックルが使いやすい。


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河原を100mほどグリグリと走ってランディングした60cmほどのコイ。顔はちょっとグロテスクだが、そのファイトに感謝をしつつ、丁重に流れの中にお帰りいただいた。




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