山梨県 葛野川支流・奈良子川

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およそ1kmがルアー、フライ専用区間。釣り人で混雑していないのも魅力。


山梨県大月市で桂川に合流する葛野川。その支流である奈良子川を自然のままに生かした管理釣り場、“奈良子釣りセンター”がある。本来はエサ釣りやバーベキューを楽しむための渓流釣り場なのだが、98年より、11月〜4月までの冬期に限りエリアのほとんどを、ルアー、フライフィッシング専用として解放している。

渓流の行程はおよそ1kmと長く、下流部は段々に仕切っていてスニーカーでも釣り上がっていける。上流部はまったく手を入れていないので、ウェーダーが必要になる。放流魚種はヤマメ、イワナ、ニジマス、ブルックと豊富で、サイズは20cm前後ながら、きれいな魚を見ることができる。

#16のパラシュートフライを落ち込みから泡筋にそって流すと、ニジマスがフライをひったくるようにくわえた。元気に走りまわり、引き味を十分楽しませてくれた。水深の浅い緩い流れでは、流下物を食べていたヤマメの鼻先に後方からエルクヘアカディスをそっと落としてみた。流れてきたフライを口でつんとつつくと、プイッと横を向いてしまった。やはり、フライだと見破られてしまったかと思っていると、なんとそのヤマメはまた引き返してきてフライをゆっくりとくわえたのだ。すばやい動きをするヤマメにしては、珍しいこともあるものだ。

この奈良子川は谷間を流れているのだが、その山の斜面からは地下水が湧き出ている。ワサビ田を伝って降りてきた湧水は奈良子釣りセンターの池へと流れこんでいる。
さほど広さはないがこの池にも、渓流とおなじく魚たちが放流されている。水源が湧水であるために、この池の水温は年間を通して10℃前後。12月の後半だというのに12.5℃もあった。

午前9時頃、谷間に太陽が差し込むと湧水池からはおびただしい数のユスリカがハッチしはじめた。それにあわせて、魚たちもいっせいにライズをはじめた。差し込んでくる冬の暖かい日射しのなかであそこでも、ここでも、細かな虫たちが飛んでいる。そのイマージャー(羽化直前の状態)だけでなく、完全に羽化をして飛んでいるユスリカに向かって大きくジャンプを繰り返す魚たち。

魚も釣り人もまさに狂乱状態だ。狂ったようにライズを繰り返す魚たちを前に、#22番のミッジフライをティペットに通すこのもどかしさ。細いティペットを長めにとり、いざライズめがけてフライをキャスト。すると、フライめがけてサーッと魚たちが四方から寄ってくるのだが、なかなかフッキングに至らないのだ。フライがヒラヒラと自然に水面に落ちて、食い意地の張った魚が近くにいればパシャッとめでたくフッキング。1日中、こんな調子で楽しめる。

山に太陽が隠れてからも、ユスリカにカディス(カワゲラ)が混じり、大きめのドライフライにもバックリと出て楽しませてくれた。冬の間中、ユスリカのハッチがあるそうなので、フライフィッシャーにとってはオフシーズンにも楽しみが増えてうれしい限りだ。




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下流部は開けているので、フライフィッシングをはじめて間もない方でも広々とキャスティングできる。インジケーターをつけてニンフを流してもOK。
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渓流でパラシュートフライに出たブルック。ヒレもきれいで斑点が鮮やかだ。
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渓流脇を途中まで歩いて釣り上がれるので、お手軽に釣りが楽しめる。


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山の斜面から湧き出る水を利用したワサビ田。この水が傍らの湧水池へと流れ込む。
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本来なら川から海へ下る習性を持つ、ギンケヤマメ。銀色でほっそりとした魚体はサケの稚魚に似ている。




問い合わせ先・奈良子釣りセンター

住所:山梨県大月市七保町奈良子10
Phone:0554-24-7636
1日券:¥4,000
JR大月駅よりバス運行あり *日曜日のみ大月駅から送迎あり
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