Following the Pass of Polar Bears.


極北の達人、ブライアン・ラドーン[Brian Ladoon]

野性的で向こう見ずに見える男、ブライアン(99年現在で47歳)は、チャチル生まれのチャチル育ちである。若いときに5〜6年、船乗りとして世界を駆けめぐった時期をのぞけば、チャチルからほかに行くことはほとんどなかった。だから真の土地っ子、“チャチリアン”である。
このハイテク時代に、先カンブリアン時代の地を、銃とハンマーを持って歩く、小説の世界に出てくるような自然児である。希少種の純粋カナディアン・エスキモー犬のブリーダーとしては、世界的に有名である。どんな天気でも、町から犬を飼っている場所まで、犬に餌を与えに行かなければならない。その毎日が、彼を自然の達人にした。世界からさまざまな人たちが、白クマや極北の野生動物の情報を聞きにくる。
子供のころから認められた絵の才能は、ときには個展も開くほどだ。彼の才能のなかには、コサック(旧ソ連)で城の設計者であった祖父の血を強く受け継いでいる部分もある。チャチルの太古の石を積み上げてホテルを建設することへと、ブライアンを向かわせたのは祖父の血であろう。すでに建設をはじめてから4年が過ぎ、使われた石は数万ともいえる。使われる道具は、数本のハンマーだけ、ハドソン湾をのぞむこの建物は、ホテルというよりは、城のようだ。


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