Following the Pass of Polar Bears.


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“ブルブル、ブルルーン”と、ブースターで繋がれた緑のトラックのエンジンがうなりだした。エンジンがかかった。点灯したトラックのライトに、白クマの目が光る。それは、ばかに大きい白クマである。エンジンのかかったトラックの中にいると、その世界はまったくちがうものになる。
またエンジンが止まっては困るので、若いカップルに町まで、後をついて運転してきてもらう。いつもは、笑い声とおしゃべりに包まれている車内も、しばらくの間、めずらしく無言だった。まるでドラマの主人公になっている気分だ。興奮に包まれていたからだ。
走るトラックの中で、“ブライアン、やったね!”と握手する。“HISA、イヤになったか?”と、ブライアンが気づかってくれる。“とんでもないよ。普通の旅行者だったら、こんな経験できないよ。それも毎日がちがうのだから。驚きだよ。明日は何が起こるかな?”。“そうなんだ”、と満足そうにうなずいたブライアンは、大声で“HISA! コーヒーにしよう”。私の返事は、もちろん“OK!”。
その夜8時すぎ、なじみのトレーダーズ・テーブルへ遅い夕食に行った。風のない冷え切った空には、最初は、薄く巨大な雲か天の川と思えたのが、とつじょ命を得たように、それは波打ちだした。どこから来たのだろう、風もないのに、色も濃くなりだした。
その動きは、白クマが犬を襲ったときのように、激しく、大胆に、速く、そしてときには薄い布でできたカーテンがゆっくり風になびくように。“オーロラだ!!”。それも天空に舞う巨大なオーロラが、東、南、そしてま上と、3か所に現れだしたのだ。光は薄いがオーロラは、緑色、赤色も見せはじめた。次から次へと形と色を妖しく変化させ、天空の神が怒っているようだ。だが、今晩の私には、肌をも切り裂くような寒空に、お祝いをしてくれるように感じられる。無事を祝ってくれているのだと。寒いが空いっぱいの大舞台で……“ウ〜ン! すごい! これが大自然だ!”。
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