Following the Pass of Polar Bears.


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寒空に立っていると、さっきの係員が、“タクシーに乗るか”と聞いてくる。“タクシーを待っている人が他にも3人いるから、いっしょに乗っていけばいい”と言う。“寒いから荷物はそこに置いて、中に入りなさい”。荷物は大丈夫だろうか、と心配しながらも中に入ってタクシーを待った。しばらくしてタクシーが来た。来たには来たが、ぼこぼこのポンコツ寸前としかいえないしろものだった。ドアちゃんと開くかなあ。まあいいか、空港に置いてかれるよりは。
タクシーの座席にあいた穴に指をつっこみながら外を眺めていると、灯りという灯りが何も見えない。信号などいくら走っても出会わない。ライトに凍った道路が浮かび上がってくるだけだ。他にほとんど何も見えない。雪の砂利道を25分も走ると、やっと町の灯りが見えはじめた。チャチルの町だ。目指すB&B(ベッド&ブレックファスト)『グード』に着いた。運転手に20ドル払って、タクシーを降りたら、70歳くらいのおばさんが、“よく来たね”と出迎えてくれた。
“ところであなた誰?”と言う。タクシーの運転手が他のグードさんと間違えて降ろしたのだ。無理もない、この町には、グードという名の家が少なくとも3軒はある。外でタクシーを待つほかない。この町に一体何台のタクシーがあるのだろう。1台でないことを祈る。こんな寒空に、なんでおっ立っていなければならないのだ。やってくるのがタクシーでなく白クマだったらどうしよう。さらに暗い気持ちになる。日本の家族の顔が“チラリ”浮かんだ。
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